ステレオ・コンプレッサーには、ひとつの信号を見ている検出器がひとつあります。ミックスでいちばん大きな音がゲインリダクションを決め、そのゲインリダクションがすべてにかかります。
ほとんどのミックスで、いちばん大きいのはキックです。スネアのこともあり、たまにリードボーカルのこともあります。つまり、キックがレコード全体のコンプレッションを決めているのです。キックが鳴るたびに、リバーブのテールは沈み、シンバルはへこみ、パッドは引っ込みます。穏やかにやれば、それは好まれるグルーです。強くやると、ミックスは音楽とは無関係なポンピングを始めます。
検出器を分けると何が起きるか
ミッドとサイドを、別々の検出器を持つ別々のコンプレッサーに通すと、キックが操るのはミッドだけになります。
サイド(リバーブ、ルーム、ダブリングしたギター、ステレオのパッド)は、サイドで起きていることに応じてコンプレッションされます。そちらはずっと安定した信号です。キックのトランジェントを含まないので、キックが鳴っても沈みません。センターがコントロールされる一方で、アンビエンスは形を保ちます。
聴こえる結果は、端が小さくならずに、真ん中が締まったと感じるミックスです。コンプレッサーがミックスの「生気を潰す」と言われることの大半は、センターのトランジェントでサイドが沈められていることで、これはその直接の解決策です。
チャンネルごとに意味のある設定
2つの半分は中身が違うので、違う扱いを求めます。
ミッド。 トランジェントはここにあります。10〜30 ms のアタックなら、コンプレッサーが閉じる前にキックとスネアが通り抜けるので、ドラムのパンチが残ります。リリースはトラックのテンポにだいたい合わせたいところです。次の拍までに戻るくらい速く、ばたつかないくらい遅く。レシオは 2:1〜4:1、ミックスバスなら 3〜5 dB のゲインリダクションで十分です。
サイド。 トランジェントはほとんどないので、速いアタックでも失うものはなく、遅めのリリースでアンビエンスが均一に保たれます。レシオはもっと穏やかに 1.5:1〜2:1、リダクションは 1〜3 dB。サイドの目的はコントロールではなく、一貫性です。
サイドをミッドより強くコンプレッションするのは、知っておく価値のある特定の効果です。隙間でリバーブのテールが持ち上がるので、まばらなミックスが厚く感じられます。サイドが上限の近くにいる時間が長くなるので、平均的にはミックスも広くなります。やりすぎると、アンビエンスが聴こえるほど呼吸し始めます。
ここでは検出器のタイプがもっと重要
2つのチャンネルには違う素材が入っているので、ステレオバスひとつの場合よりも、検出器のキャラクターが重要になります。
プログラム依存のリリースを持つオプト系の検出器は、サイドによく合います。リリースが目立つことなく、アンビエンスをなめらかにします。ミッドには VCA か FET の検出器を使えば、センターが必要とするトランジェントへの掴みが得られます。2つのチャンネルでタイプを混ぜられるのは、ミッド/サイドのコンプレッションでできて、ステレオのコンプレッションではできないことのひとつです。
ステレオのままにしておくべきとき
ミッド/サイドのコンプレッションは、どこにでもかけるべきアップグレードではありません。
ソロのピアノ、モノラルに近いデモ、センターに置いたビートの上のラップボーカルのように、すでに狭いミックスでは、サイドにほとんど何もありません。ほぼ無音をコンプレッションしても、ノイズフロアと紛れ込んだルームトーンが持ち上がるだけです。フレーズの間にかすかなヒスが上がってくるのが聴こえるでしょう。
ライブのルーム録音や、うまく置かれたオーバーヘッドのペアのように、ステレオイメージそのものが演奏の一部になっている素材では、独立したコンプレッションが2つのチャンネルの関係を緩め、イメージを漂わせてしまうことがあります。リンクしたステレオ・コンプレッサーはその関係を固く保ちます。そこではそれが正しい振る舞いです。
見分け方は、2つのチャンネルが独立して動いたら失敗のように聴こえるかどうかです。ドラムのルームマイクなら、そう聴こえます。リバーブがかかったミックスバスなら、そうはなりません。
パラレルは安全網
何を設定するにしても、ブレンドして戻してください。Mix コントロールがあれば、センターをコントロールできるほどミッドを強くコンプレッションしてから、トランジェントが戻ってくるまで下げられます。
これはステレオよりミッド/サイドで重要です。2つのチャンネルが別々に処理されていて、強い設定ではイメージが引っ張られ始めることがあるからです。処理した信号とドライ信号をブレンドすれば、元のステレオの関係が錨として下に残ります。強めに設定してから、ミックスが処理された音に聴こえなくなるポイントを探してください。
最初の手順
- サイドをバイパスして、まずミッドをコンプレッションします。センターを落ち着かせてください。
- サイドを穏やかに加え、1〜3 dB を目指します。
- レベルを揃えてバイパスと比べます。大きくなっただけのコンプレッションは、いつも良く聴こえるからです。
- モノラルで確認します。独立した処理は、サイドが打ち消されたときにだけ現れる形で、バランスを動かすことがあるからです。