モノラルのベースは、判断ではなく規則として繰り返される、数少ないミックスのアドバイスのひとつです。ある周波数より下は、すべてセンターにまとめる。よく挙がる数字はたいてい 100 Hz、ときどき 120、たまに 200 で、その違いの説明はありません。

規則そのものは正しいです。それでも理由を知っておく価値はあります。正しい周波数はミックスによって変わり、間違った周波数は耳で分かるからです。

そもそもなぜサイドにベースがあるのか

ベースをパンした覚えはないはずです。それでもサイドに入っているのには、4つの理由があります。

ステレオの拡張。 広がりのコントロールは、どれもミッドに対してサイドを増やすことで働きます。全帯域にかければ、ほかのすべてと一緒にベースも広がり、しかも動かすエネルギーがいちばん大きいのはベースです。

ステレオのソース。 サンプリングしたステレオのワンショット、2つのデチューンしたオシレーターを左右に振ったシンセのパッチ、キットに立てたルームマイクのペア。どれも、チャンネル間で異なる低域を含んでいます。

リバーブ。 キックをステレオのリバーブに送れば、テールの低域はサイドに落ちます。

録音。 ひとつの音源に距離の違う2本のマイクを立てると位相差が生まれ、低域ではそれがサイドの成分として現れます。

どれもミスではありません。ただ、モノラル化でレベルを失うことになり、それがいちばん響くのが低域です。

まとめると何を失うか

低域の帯域をモノラルにまとめると、そこにあったサイドの成分がなくなります。ベースが持っていた広がりは失われます。

その広がりは、まず聴き取れません。人間の音の定位は、約 150 Hz 以下ではほとんど存在しないレベル差に頼っています。また、サブベースの波長は十分に長いので、一般的な部屋の反射が、録音が持っていた方向の手がかりを上回ってしまいます。ステレオで聴く限り、モノラルのベースの実際の影響はほぼゼロです。

得られるのは、モノラル化でそのエネルギーを失わなくなることです。クロスオーバーを入れる前に低域で 5 dB 失っていたミックスは、入れた後はたいてい 1 dB 未満の損失になります。

はっきり変わるのはひとつだけ。低い倍音が動きの一部になっていた、広いステレオのシンセのキャラクターです。それをまとめると、その動きが平らになります。クロスオーバーの位置が重要になるのは、このケースです。

どこに置くか

80〜100 Hz は保守的な設定です。サブベースの打ち消しを直し、それより上には一切触れません。ベースがすでにセンターにあり、不意打ちを防ぎたいときに使います。

120〜150 Hz は、現代的なプロダクションの多くで使える標準的な設定です。キックの基音とベースの胴鳴りを捉えます。モノラル化の損失は、たいていそこに集中しています。

200 Hz より上 は、ステレオで聴いて分かり始めます。スネアの胴鳴り、ギターの低域、パッドの下のほうがそこにあり、それをセンターに寄せると、人が気づくほどミックスが狭くなります。ここまで上げるのは、測定で問題がそこまで高いと分かったときだけにしてください。

決め方は、選ぶのではなく測ることです。モノラル化でいちばん失う帯域を見つけ、そのすぐ上にクロスオーバーを置き、どれだけ戻ったかを確かめます。120 Hz で 4 dB 戻り、200 Hz で 4.3 dB 戻るなら、120 を使いましょう。

誰かに聞いた数字で決めたクロスオーバーは、推測です。実際に打ち消し合っている帯域から決めたクロスオーバーは、修正です。

しないほうがいいとき

問題がベースではないとき。 モノラル化の損失が 400 Hz にあるなら、モノラルのベースは何もせず、理由もなく低域を狭めただけになります。

ステレオのベースこそが肝のとき。 広く動く低いシンセを土台にしたレコードもあります。まとめるとそのパートが死んでしまうなら、モノラル化よりパートのほうが大事です。規則を当てはめるのではなく、分かったうえで判断してください。

低域がすでにモノラルの素材。 打ち込みの音楽の多くは、キックもベースもセンターにあり、150 Hz 以下にはほかに何もありません。クロスオーバーを入れても何も変わりません。それは構いませんが、何かを直したとは思わないでください。

極性のミスを見つける前。 モノラル化で音が痩せるのではなく、要素がまるごと消えるなら、どちらかのチャンネルが反転しています。モノラルのベースは低域の症状を隠すだけで、残りの問題はそのまま残ります。

最初の手順

  1. まずモノラル化を確認し、どの帯域がレベルを失うかを見つけます。間違った帯域を直すのが、このミスのいちばんよくある形です。
  2. クロスオーバーは、覚えている数字ではなく、いちばん悪い帯域のすぐ上に置きます。
  3. オンとオフを切り替えながら、ステレオで聴きます。ミックスが狭くなるのが聴こえたら、クロスオーバーが高すぎます。
  4. もう一度モノラル化を確認し、デシベルが戻ったことを確かめます。
  5. そのままにしておきます。一度決めたら触らないコントロールで、オートメーションするものではありません。

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